今回はうちの「先祖がつぶやく」Twitterアカウントにいただいた質問から、ちょっと勉強してみました。
質問:「あごう」という膠(にかわ)でできた墨について
質問をいただきました。そもそも書道の墨は、油や木やらを燃やした時に出る煤(すす)と、動物の皮や骨から抽出した膠(にかわ)を混ぜ合わせて作られます。煤で黒さを出して、膠でくっつける、というと大雑把ですが。それぞれ原材料が自然の物ですので、そこから作られた墨は書いた後何年経っても色も変わらず綺麗ですよということです。
原材料は大事~ということで、この煤と膠にもこだわって作られた墨が良い墨とされ、貴重な材料であれば値段も上がります。小さくでも数万円の値段の墨にもそれ相当の理由があるわけです。
玉林堂が長く取引させていただいている、1577年創業の株式会社古梅園(こばいえん)は品質にこだわって作られておられます。
そして今回聞かれた「あごう」について古梅園の方に教えていただきました。
阿膠(あごう・あきょう)
阿膠を使った墨の資料を見せていただきました。ロバの皮から取れる膠とのこと。
貴重な限定品
資料では3つの商品について書かれています。
- 山羊膠油煙墨・・・国産山羊膠 百年もの 一番膠の上澄みだからこその透明感
- 阿膠油煙墨・・・中国製阿膠(驢膠)百年もの 「本草網目」にも出てくる有名な伝統的膠
- 鹿膠油煙墨・・・国産鹿膠 百年もの 野性味溢れる力強い味わい
これは古墨についてよく言われますが、墨が「古いほど良い色になる」のは膠が大きく関わっているようです。ゼラチンである膠は時間の経過と共に変化するとのこと。膠は抽出した後保管されて、良い使い時を見て墨にするようです。
そして古梅園の蔵に百年以上眠らせていた古い膠を、2006年に墨として完成。墨になって3年、ちょうど使い頃になってきて満を持しての販売です。墨質というのはどんどん変わり、あと数年で墨質が安定して名墨といわれる色になるようです。
ワインのように、こういう奥深い部分があるのが墨のおもしろいところですね。
「最良の膠」 阿膠
そして一緒に送ってもらったある本の解説によると・・・
膠は獣や鳥などいろいろな動物のコラーゲンを含む骨・皮・健・結合組織・うろこ・うきぶくろなどの部分から取り出されたゼラチンを主成分とするたんぱく質の類だそうです。なので種類が多く、産地や原料の動物や部分などから名前というか呼び方が決まるのです。
中国の医薬に関する有名な著書「重訂本草網目啓蒙」の中で小野蘭山という人の解説によると、中国山東省の東阿井、阿膠井、阿井と言われた井戸の水を使って、黒い驢馬(ロバ)の皮を煎じて作ったのが「阿膠」であり、水が違うものは「阿膠」とは言わないそうです。しかもその水は、その阿膠を作る時だけに使われたそうです。
この商品はその伝説の「阿膠」なのか?
ということになってきますが、資料によると、阿膠が発明された当時の手がかりが少なく、どういう品質か正確にはわからないそうです。確実な情報として、世界大戦前まで中国から阿膠の名で日本へ輸入された膠があったということです。そして古梅園の方は、大戦よりも前に輸入した膠を使用していると言ってましたので、この輸入されていた時期の阿膠なのでしょう。
伝説の阿膠に習って作られた、というのが正しいかもしれませんが、こういう歴史のある珍しい墨なのでしょう。